新規顧客獲得を続ける製造業に共通する『型』──5社の構造

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この記事の結論

新規顧客獲得を続けている製造業に共通するのは、手法の数ではありません。紹介や口コミが主な流入経路でありながら、その紹介が起きる「入口」をつくる活動をやめていないことです。取材アーカイブから5社の判断を並べると、入口・断らない領域・窓口・分業の4点に共通の型が現れます。

新規顧客獲得とは何か──製造業における定義

新規顧客獲得とは、既存の取引関係の外にある企業との最初の接点をつくり、初回の取引に至るまでの道筋を設計する活動です。広告や訪問といった個別の手法を指す言葉ではなく、接点が生まれる仕組みそのものを含みます。

製造業の場合、この定義には少し補足が必要です。多くの現場で、新規案件の入口は売り込みではなく「相談」の形で現れます。既存の取引先から名前を挙げてもらう、展示会で聞かれる、困りごとを持ち込まれる。販路拡大という言葉から連想されがちな能動的な営業活動よりも、受動的に見える接点のほうが実際の獲得件数を支えている、という構造です。

そうすると、経営の問いはこう変わります。手法をどう増やすかではなく、相談が持ち込まれる状態をどうつくり、それを維持するか。編集部の取材アーカイブから、新規顧客の獲得が途切れていない製造業5社の判断を並べたところ、この問いへの答えに共通の型が見えてきました。

なぜ手法を増やしても新規顧客獲得が続かないのか

先に、型を持っていなかった時期の例から見ていきます。

搬送機器メーカーKK社は、代理店経由で注文を待つ営業体制を長く続けていました。利益は出ていたものの、売上・利益は横ばい。経営者は当時を「利益が出ていたことで、逆に安住してしまった」と振り返っています。このままでは10年後に事業を維持できないという危機感が、体制を変える起点になりました。

同社が最初に始めたのは、新しい営業手法の導入ではありません。顧客が何を運び、どう生産しているかを見に行く、という活動でした。転機は、現場の困りごとに自社製品を少し手直しして提案した社員が顧客に喜ばれた出来事です。その内容が日報を通じて社内に共有され、営業部門だけでなく製造部門の動機づけにもつながりました。同社はその後、課題発見のヒントを共有する営業支援アプリを整備し、現場を見る力をベテランの職人技で終わらせない仕組みへと広げています。

ここから読み取れるのは、手法が足りなかったわけではないということです。足りなかったのは、相談が持ち込まれる入口と、それを組織の誰もが使える形にする仕組みでした。待つこと自体が問題なのではなく、待っている状態を誰も設計していないことが問題だった、と言い換えられます。

新規顧客獲得を続ける製造業5社に共通する4つの型

型①:入口を「製品」ではなく「相談」に置く

精密機器メーカーG社は、特定の製品や技術を起点に事業を広げてきた会社ではありません。顧客からの相談に応え続けた結果として、事業領域が広がっていきました。同社が差別化の起点と位置づけているのは、仕様書がない曖昧な段階の相談から関われる体制です。要件が固まってから声がかかるのではなく、固まる前に呼ばれる。この一段階の違いが、価格比較に巻き込まれるかどうかを分けています。

産業機器メーカーJ社は、この入口をさらに前に置きました。営業がテストセンターで実際に検証データを示し、提案段階で「答え」を提示するのです。顧客は導入後の成果を具体的にイメージでき、社内の稟議も通りやすくなります。同社はこの一手間が、価格競争を避ける構造をつくっていると捉えています。

型②:「断らない領域」を先に決めている

新規の相談を受け続けるには、受け止める幅をあらかじめ決めておく必要があります。

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