リードナーチャリングとは──製造業の受注を分ける判断軸

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この記事の結論

リードナーチャリングとは、今すぐ購入する段階にない見込み客と接点を保ち続け、相手が検討を始めたときに真っ先に思い出される状態をつくる活動です。B2Bでは、ある時点で購買を検討している企業はごく一部にすぎず、残る大多数といかに関係を保つかが受注を左右します。商談サイクルが長く、技術者が意思決定に関わる製造業では、この考え方の重要性はいっそう高まります。目先の「今すぐ客」だけでなく、将来の買い手をどう育てるかが問われます。

リードナーチャリングとは何か

リードナーチャリングとは、今すぐ購入する段階にない見込み客と継続的に接点を持ち、相手が検討を始めたときに真っ先に選択肢として思い出される状態をつくる活動です。日本語では「見込み客の育成」と訳されますが、売り込みを重ねて購入を急かすことではありません。相手の検討が動き出すそのときまで、有用な情報を届けながら関係を保ち続けることを指します。

混同されやすい言葉に、リードジェネレーションとドリップメールがあります。リードジェネレーションは見込み客を「獲得する」入口の活動であり、ナーチャリングは獲得したあとの関係を「保ち、深める」活動です。入口で名刺や問い合わせを集めても、その後の接点が途切れれば、検討が始まる頃には忘れられてしまいます。ドリップメールは、あらかじめ用意した内容を段階的に自動配信する手法の一つで、ナーチャリングを実行する道具ではあっても、ナーチャリングそのものではありません。

なぜ「今すぐ客」だけを追うと機会を逃すのか

営業の現場では、どうしても目の前の案件に力が集まります。四半期の数字を追うほど、すぐに商談化しそうな相手に資源を寄せたくなるのは自然なことです。しかし、顧客が検討を始めるタイミングは、こちらの都合ではなく相手の都合で決まります。設備の更新時期、担当者の交代、規制や市況の変化——きっかけが訪れたときに思い出してもらえなければ、それまでの接点は成果につながりません。「今は買わない」相手を切り捨てるのではなく、検討期まで関係をつないでおくことが、結果として受注の母数を広げます。

データで見るB2B購買行動の実像

ここで紹介する数値は、いずれもB2B全般の傾向を示す調査であり、製造業に限定した調査ではありません。その前提のうえで、購買行動がどう変化しているかを確認します。

一つ目は、いわゆる「95-5ルール」です。ある時点で購買を検討している(イン・マーケットの)B2B企業は全体の約5%にすぎず、残る約95%は当面購入する予定がない、という目安を示したものです。企業が主要な取引先——たとえば主力銀行や法律事務所——を切り替える頻度が平均して数年に一度である、という観察から導かれています。

ただし、この数値の扱いには注意が必要です。提唱したEhrenberg-Bass InstituteのJohn Dawes教授自身が、「95%という数字は精密な統計値ではなく、大多数の企業が特定の時期には購買市場にいないという事実を伝えるための目安(ヒューリスティック)である」と明言しています。本記事でも、正確な比率ではなく「大半の見込み客は今すぐには買わない」という考え方を示すものとして扱います。

二つ目は、購買担当者が営業と過ごす時間の短さです。Gartnerの調査によれば、B2Bの購買担当者が購買プロセス全体のうちサプライヤーとの商談に費やす時間は約17%にとどまり、複数社を比較検討する場合、1社あたりに割かれる時間は5〜6%程度まで下がるとされています。買い手は残りの大半の時間を、自ら情報を集め、社内で検討することに使っています。営業が対面で伝えられる時間が限られるからこそ、営業以外の接点でどれだけ信頼を積めるかが問われます。

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