東京都内の中小企業が展示会に出展する際、費用の一部を助成してもらえる公的制度があります。代表的なのが「展示会出展助成事業」(助成率2/3以内・上限150万円)と「市場開拓助成事業」(助成率1/2以内・上限300万円)です。制度ごとに申請受付期間・助成対象期間・対象要件が異なるため、販路拡大の機会を活かすには、早めの確認が経営上の判断軸となります。
展示会出展助成とは何か──東京都が設ける2つの支援制度
展示会出展助成とは、都内中小企業が展示会への出展を通じて販路を開拓する際に、出展費用の一部を公的機関が助成する仕組みのことです。東京都および公益財団法人東京都中小企業振興公社は、都内中小企業の市場拡大を支援するため、「展示会出展助成事業」と「市場開拓助成事業」の2制度を設けています。
展示会は、特定の業界・ターゲット顧客に対して自社製品やサービスを短期間で訴求できる場です。しかし、小間料・装飾費・輸送費・販促物制作費を合算すると、出展コストが100万円単位に達するケースもあります。助成制度の存在を知らずに出展機会を見送る企業がある一方、制度を活用してコストを抑えながら販路開拓を加速している企業もあります。経営者として、まず2つの制度の概要と選択基準を押さえておきたいところです。
展示会出展助成事業:対象・助成内容・申請要件
「展示会出展助成事業」は、令和7年度または令和8年度の「中小企業活力向上プロジェクトアドバンスプラス」の無料経営分析を受け、当助成事業の利用が有効であると認められた都内中小企業を対象とした助成制度です。
対象経費の範囲は広く、展示会参加費(小間料・資材費・輸送費)のほか、EC出店初期登録料、印刷物・動画制作費、広告掲載費、Webサイト制作・改修費などの販売促進費も含まれます。
| 項目 | 内容 |
| 助成率 | 2/3以内 |
| 助成限度額 | 150万円 |
| 主な対象要件 | 令和7年度または令和8年度の「中小企業活力向上プロジェクトアドバンスプラス」の無料経営分析 |
| 申請受付期間 | 令和8年4月1日〜令和9年1月14日のうちの規定日、全10回 ※受付期間中でも予算に達した時点で締切 |
| 助成対象期間 | 交付決定日から1年1カ月 |
| 申請方法 | 電子申請(Jグランツ) |
(出典:公益財団法人東京都中小企業振興公社)
なお、売上が前期より減少している企業や、直近期に損失を計上している企業についても対象に含まれる場合があります。詳細な対象要件と最新の申請受付スケジュールは、東京都中小企業振興公社の公式サイトでご確認ください。
市場開拓助成事業:高助成額が魅力の認定製品向け制度
「市場開拓助成事業」は、東京都や公社から評価・認定・支援を受けた製品・サービス、または「イノベーションマップ」の支援テーマに該当する製品・サービスを持つ都内中小企業を対象に、国内外の展示会出展や販促活動の費用を助成する制度です。
助成率は経費の1/2以内ですが、上限額は最大300万円と「展示会出展助成事業」を大きく上回ります。1回の申請で国内・海外・オンライン問わず複数の展示会に活用できる柔軟性も特徴です。
| 項目 | 内容 |
| 助成率 | 1/2以内 |
| 助成限度額 | 300万円 |
| 主な対象要件 | 東京都・公社から一定の評価・認定・支援等を受けた製品・サービス、またはイノベーションマップの開発支援テーマの分野に属する製品・サービスを持つこと |
| 申請受付期間 | 令和8年5月15日(金)10:00〜5月29日(金)17:00 |
| 助成対象期間 | 令和8年9月1日〜令和9年11月30日まで(最長1年3カ月以内) |
| 申請方法 | 電子申請(Jグランツ) |
(出典:公益財団法人東京都中小企業振興公社)
なお、本制度では「展示会等参加費」が申請の必須項目であり、販促費のみでの申請は認められていません。出展計画と販促物制作計画を一体で設計することが、本制度を最大限に活用する上でのポイントとなります。
2制度の比較:経営判断のための対照表
自社に適した制度を選択するために、主要項目を比較します。
| 比較項目 | 展示会出展助成事業 | 市場開拓助成事業 |
| 主な対象 | 経営分析受診済みの都内中小企業 | 認定・評価・支援等を受けた製品、または成長産業分野に該当する製品等を持つ都内中小企業 |
| 助成率 | 2/3以内 | 1/2以内 |
| 助成限度額 | 150万円 | 300万円 |
| 対象経費 | 展示会参加費+販促費 | 展示会参加費(必須)+販促費 |
| 複数展示会への適用 | ─ | 1申請で複数対応可 |
| 申請受付期間 | 令和8年4月1日〜令和9年1月14日までのうち、指定された受付期間(全10回) | 令和8年5月15日(金)10:00〜5月29日(金)17:00 ※令和8年度の申請受付は終了 |
| 助成対象期間 | 交付決定日から1年1カ月以内 | 令和8年9月1日〜令和9年11月30日まで(最長1年3カ月以内) |
| 申請方法 | Jグランツ(電子申請) | Jグランツ(電子申請) |
(出典:公益財団法人東京都中小企業振興公社)
2制度の分岐点は「事前条件」にあります。「展示会出展助成事業」は公社の経営分析プログラムの受診歴が前提であり、まだ受けていない企業はまずそちらから着手する必要があります。「市場開拓助成事業」は、東京都や公社による評価・認定・支援等を受けた製品・サービス、またはイノベーションマップの支援テーマに該当する製品・サービスが前提となるため、該当する企業にとって有力な選択肢となります。
Q:2つの制度を同一の展示会出展に対して重複して申請することはできますか?
A:同一の出展費用・販促費用について、複数の助成制度を併用できるかどうかは、制度ごとの募集要項や個別の申請内容によって判断が分かれる場合があります。申請前に、自社の出展計画・対象経費・他制度の利用状況を整理した上で、東京都中小企業振興公社の相談窓口に確認することをおすすめします。
助成制度を「コスト削減」で終わらせない3つの着眼点
① 展示会の目的と期待成果を先に設計する
助成制度によって初期コストは抑えられます。しかし、展示会の真の投資対効果は、出展後の商談・受注・関係構築にかかっています。「誰に会いに行くのか」「会期後3か月でどんな成果を目指すのか」を明確にした上で助成制度を活用してこそ、制度を「コスト削減の手段」から「経営投資の加速剤」に変えることができます。
② 販促費の範囲を広く捉える
両制度とも、展示会参加費に加え、パンフレット・Webサイト・動画・広告掲載費など幅広い販売促進費が対象経費に含まれます。この機会に見直しを検討していた会社案内や製品紹介動画のコンテンツ制作を、助成対象として組み込める可能性があります。出展計画と販促物制作計画を一体で設計することで、助成の活用範囲を最大化できます。
③ 申請タイミングを逃さない
申請受付は期間が定められており、出展スケジュールと申請受付期間が噛み合わなければ助成を受けることができません。出展を検討している段階で、早めに受付スケジュールと自社の出展計画を照合することが重要です。最新の申請受付情報は、公益財団法人東京都中小企業振興公社の公式サイトでご確認ください。
申請を検討する前に確認すべきステップ
Q:展示会出展が初めての企業でも申請できますか?
A: 出展経験の有無は主たる要件ではありません。「展示会出展助成事業」では経営分析プログラムの受診歴、「市場開拓助成事業」では製品・サービスの認定状況が主な判断基準となります。初出展の企業でも、要件を満たしていれば申請は可能です。
なお、申請にあたっては以下の順序で準備を進めることをおすすめします。
- 対象要件の確認:経営分析の受診歴、製品・サービスの認定状況を確認する
- 出展計画の確定:助成対象期間内に出展スケジュールが収まるかを照合する
- 対象経費の整理:展示会参加費・販促費の見積もりを早めに取得する
- 相談窓口の活用:東京都中小企業振興公社への早期相談で申請ミスと機会損失を防ぐ
まとめ
- 東京都内の中小企業が展示会出展を検討する際には、「展示会出展助成事業」や「市場開拓助成事業」など、出展費用の一部を助成対象とする制度を活用できる可能性がある。
- 「展示会出展助成事業」は助成率2/3以内・上限150万円、「市場開拓助成事業」は助成率1/2以内・上限300万円と、制度によって助成内容が異なる。
- 両制度とも、展示会参加費だけでなく、印刷物・動画・Webサイト・広告掲載費などの販売促進費が対象に含まれる場合がある。
- 申請には対象要件・受付期間・助成対象期間があり、出展スケジュールと申請タイミングを早期に照合することが重要である。
- 助成制度の活用は単なるコスト削減ではなく、展示会出展を販路開拓のための経営投資として実行するための選択肢である。
制度ごとに対象要件や受付スケジュールは異なるため、まずは自社がどの制度に該当するかを確認することが出発点です。展示会出展を検討している場合は、早めに最新の募集要項を確認し、必要に応じて東京都中小企業振興公社の相談窓口を活用するとよいでしょう。
※本記事に記載の申請受付期間・助成対象期間・制度内容は、2026年6月時点の公開情報をもとにしています。制度内容や受付スケジュールは年度ごとに変更される場合があるため、申請前には必ず公益財団法人東京都中小企業振興公社の公式サイトで最新情報をご確認ください。