取引先は、もう検索エンジンだけで会社を探してはいない ― 製造業経営者のための「生成AI検索」入門

渡辺順也(株式会社イノベーター・ジャパン代表/社会構想大学院大学 准教授)|ものづくり経営フォーラム

この記事の結論

取引先が会社を探す方法は、生成AIの普及によってすでに変わり始めています。検索エンジンという入り口はいまも主流ですが、AIに質問して「答え」を直接受け取る探し方が、製造業の購買現場にも及び始めています。新しい入り口では、「検索結果で上位に表示される」ではなく「AIに認識・引用される」ことが、見つけてもらうための条件になります。

「最近、Webサイトからの問い合わせが減ってきた」。そう感じている製造業の経営者は、少なくないはずです。その背景には、景気や競合の動きだけでは説明しきれない、構造的な変化があります。顧客が会社を探す方法そのものが、生成AIの普及によって変わり始めている。本稿は、LLMOやGEOといった具体策に入る前の整理です。まずは、私たちが実際に目にした一例から見ていきます。

1年で、サイトへの流入が半減した

当社が支援する企業のなかに、約1年でコーポレートサイトへの流入がほぼ半減したケースがあります。

製品も、営業体制も変えていません。サイトを大きく作り替えたわけでもない。それでも、サイトを訪れる人の数だけが、静かに半分近くまで落ちていました。アクセス解析を確認すると、減少の大半を占めていたのは検索エンジン経由の流入です。これまで安定して人を運んでくれていた経路が、目に見えて細っていました。

慎重に申し添えれば、流入減少の要因が一つに特定できるわけではありません。季節要因も、市場環境の変化もあり得ます。ただ、ちょうど同じ時期に「検索そのものの形」が大きく変わりつつあることを踏まえると、これを単発の異常値として片づけるのは危ういと考えています。同様の傾向は、特定の業種に限った話ではなくなりつつあるからです。

「自社が使うか」と「顧客が使うか」は、別の問題

「うちはBtoBの製造業。一般消費者向けの商売ではないのだから、生成AIで検索などまだ先の話だろう」——こうした受け止めは、決して不自然ではありません。新しい技術にすぐ飛びつかず、自社の業務に本当に必要かを見極めてから動く。製造業の経営判断として、むしろ堅実な姿勢です。

実際、日本企業の慎重さはデータにも表れています。総務省『令和7年版 情報通信白書』によれば、企業の業務における生成AI利用率は日本が55.2%。中国(95.8%)、米国(90.6%)、ドイツ(90.3%)が軒並み9割を超えるのと比べると、日本はまだ様子見の段階にあるといえます。

(出典:総務省『令和7年版 情報通信白書』2025年7月公表)

ここで注意したいのは、「自社が生成AIを使うかどうか」と「自社を探す側が生成AIを使うかどうか」は、まったく別の問題だという点です。自社がまだ導入していなくても、自社を探す顧客がすでに使い始めていれば、影響は確実に及びます。そして経営に効いてくるのは、後者のほうです。

どれだけ広がっているのか

数字で確認します。

総務省の同じ白書によると、日本で生成AIを使った経験のある個人は26.7%。前年調査の9.1%から、約3倍に増えました。世代差は大きく、20代では44.7%が利用経験ありと回答しています。海外との差はなお大きく、米国は68.8%、中国は81.2%に達します。

(出典:総務省『令和7年版 情報通信白書』2024年度調査)

この26.7%は2024年度の調査値であり、現在はさらに上がっているとみられます。より新しい民間調査では、ICT総研が2026年2月に実施した調査で、インターネット利用者の54.7%が直近1年以内に生成AIを使った経験があると回答しました。

(出典:ICT総研「2026年2月 生成AIサービス利用動向に関する調査」)

調査ごとに対象も設問も異なるため、これらの数値を単純に並べて比較することはできません。ただし、いずれの調査も「急速に拡大している」という方向では一致しています。傾向そのものは、もはや揺らいでいないとみてよいでしょう。

本質は「使われ方」――検索の入り口が動いている

普及率以上に、製造業の経営にとって重要なのは「何に使われているか」です。

MM総研の調査では、生成AIの利用用途で最も多かったのが「検索機能」で52.8%。文章作成(45.1%)を上回り、首位でした。

(出典:MM総研「生成AIサービスの個人利用率」2025年9月発表)

つまり、多くの利用者にとって生成AIは、すでに「検索の代わり」として使われ始めています。サイバーエージェントのGEO Lab.がおこなった調査では、ChatGPT利用者の約7割が検索エンジンの代替として新たに定着したと報告されました。日常の検索行動で生成AIを使う人も、全体の21.3%にのぼっています。

(出典:サイバーエージェント GEO Lab. 調査/2025年)

その後の調査では、この比率はさらに上昇しています。同社の第三弾調査(2026年2月発表)では、検索時に生成AIを使う人が全体で37.0%、10代では64.1%に達しました。

(出典:サイバーエージェント GEO Lab. 第三弾調査/2026年2月発表)

全体像を引いて見ると、変化の速さがわかります。Hakuhodo DY ONEの「AI検索白書2026」によれば、2025年12月時点でChatGPTのセッション数は約16.2億に達し、検索最大手Googleの約4分の1にまで迫りました。Google検索の結果ページに要約(AI Overviews)が表示される割合も、観測上は2025年5月の9%から同年11月には32%へと、半年で約4倍に拡大したと報告されています。

(出典:Hakuhodo DY ONE「AI検索白書2026」2026年3月公開)

冒頭で触れた支援先の「検索流入の急減」も、この大きな潮流の中に置いてみると、孤立した現象ではないことがわかります。

「生成AI検索」とは何か

ここで言葉を定義しておきます。生成AI検索(AI検索)とは、キーワードを入力してリンクの一覧を得る従来の検索ではなく、ChatGPTやGeminiといったAIに質問を投げかけ、まとめられた「答え」を直接受け取る情報の探し方を指します。利用者はリンクを一つずつ開く代わりに、AIが整理した結論と、その根拠として示された情報源を受け取ります。比較や絞り込みの一部を、AIが肩代わりするようになった、ということです。

両者の違いを整理すると、次のようになります。

観点 従来の検索(Google等) 生成AI検索(ChatGPT等)
探し方 キーワードを入力する 質問する・相談する
結果の形 リンクの一覧 まとめられた「答え」+根拠
比較・絞り込み 利用者が複数サイトを見て自分で行う AIが候補を絞って提示する
自社が現れる条件 検索結果で上位に表示される AIに認識・引用・推薦される
出会いの起点 「会社を探している」と自覚した人 「課題を相談している」段階の人
最初の一歩 コンテンツ構造の最適化 強みの棚卸しと言語化=基本のマーケティング

特に注目すべきは、最下段です。従来は「この部品を作っている会社を探そう」と自覚した人が、検索窓に向かいました。生成AIでは、まだ会社名どころか解決策も固まっていない「相談」の段階で、自社の名前が挙がるかどうかが問われます。顧客との出会いの起点が、検討のさらに手前へと移っているのです。

製造業・BtoBでも、すでに始まっている

「それは消費者の話であり、専門性の高い製造業は別だ」という反論は当然あり得ます。ここは、製造業に絞った調査で確認します。

製造業向けマーケティングを手がけるテクノポートが2026年に実施した調査(製造業従事者317名対象)では、従来は検索エンジンを使っていた層から「初手からAIを使って情報収集するようになった」という声が多く上がりました。AIが提示した情報をもとに、実際に企業への問い合わせや製品導入にまで至った担当者も存在し、生成AIが情報収集の一次スクリーニング(最初のふるい分け)の役割を担い始めていると報告されています。

(出典:テクノポート「製造業における情報収集・購買プロセスの生成AI利用 実態調査(2026年版)」)

BtoB全般でも傾向は共通しています。法人向けサービスの導入・見直し経験者180名を対象とした調査では、検討時の情報収集にAI(ChatGPT等)を使ったことがある人が38.3%。すでに約4割が、購買の検討プロセスでAIを使っているという結果でした。

(出典:エヌケーエナジーシステム「BtoB購買プロセスにおける情報収集・意思決定の実態」2026年1月/n=180)

つまり、何が起きているのか

起きていることを一言で表すなら、人通りの多かった通りから、客足が別の通りへ移り始めている、という状況です。自社の工場も拠点も、場所は何ひとつ変えていない。看板も出している。それでも、前を通る人が減っていく。理由は単純で、人が歩く道筋そのものが変わったからです。

検索エンジンという「通り」は、いまも最大の人通りを保っています。しかし、生成AIという新しい通りに、確実に人が流れ込み始めている。そして新しい通りでは、「検索結果で上位に表示される」ことではなく、「AIに認識され、引用される」ことが、見つけてもらうための条件になります。ここが、従来のSEOの発想とは決定的に異なる点です。

調査会社のGartnerは、2026年までに従来型検索エンジンの検索ボリュームが25%減少すると予測しています(2024年2月発表)。予測値である以上、相応に割り引いて受け止めるべきですが、潮目が変わりつつあること自体は、もはや疑いにくい段階にあります。冒頭の支援先で起きた検索流入の急減は、その変化が一部の企業にとって、すでに「予測」ではなく「実害」として現れ始めていることを示しています。

経営者が、まず確認すべきこと

整理します。生成AIで情報を探す人は、製造業の周辺でも確実に増えている。検索の入り口は「キーワードで探す」から「AIに相談する」へと、静かに、しかし速く移りつつある。そして新しい入り口では、見つけてもらうための条件そのものが変わる。ここまでが、本稿でお伝えしたかった「背景」です。

これはWebマーケティングの細かな技術論ではなく、「会社の入り口の場所が変わる」という、より根本的な経営課題だと捉えるべきだと考えています。場所が変われば、看板の出し方も変わる。次回は、その製造業ならではの看板の出し方「製造業特化のLLMOとは何か」を、汎用的なLLMOとの違いも含めて具体的に整理します。

その前に、経営者の方にひとつだけお勧めしたいことがあります。自社の名前や主力製品を、ChatGPTやGeminiに尋ねてみてください。何が返ってきて、何が返ってこないか。そこに、自社が「新しい通り」でどう見えているか。あるいは、見えていないかが、はっきりと表れます。確認は、そこから始まります。

よくある質問

製造業のような専門領域でも、本当に生成AIで会社を探す人がいるのですか?

A:はい、そう言える段階に入っています。製造業従事者317名を対象とした2026年の調査では、「最初からAIで情報収集する」層が増え、AIが最初のふるい分けを担い始めていることが確認されています(テクノポート、2026年)。BtoBの購買検討でAIを使った経験がある人も約4割(エヌケーエナジーシステム、2026年・n=180)。サンプル数の限られた調査ではありますが、「専門領域だから無縁」とは言い切れないのが実態です。

一点、冷静に補足します。これらの民間調査はサンプル数が数百名規模のものが多く、確定した普及率というより「方向性を示すデータ」として読むのが正確です。それでも、独立した複数の調査が同じ向きを示している事実は、軽視すべきではないと考えています。

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