この記事の結論
生成AIは、名前を挙げて尋ねれば自社の技術を正確に説明します。しかし「この課題をどう解決すべきか」と課題の側から尋ねられたとき、自社は候補に挙がらない。当社の定点観測では、指名の質問で3つのAIすべてが言及した一方、課題起点の5問はいずれもゼロでした。認識はされています。候補に挙がっていないだけです。
技術は知られている。それでも新規の引き合いは来ない
生成AIに社名やサービス名を入れて質問すると、自社の技術は正確に説明されます。当社の定点観測でも、指名の質問に対しては3つのAIすべてが技術的特徴を正しく説明しました。同じ会社について、社名を含まない課題起点の質問を5問投げたところ、3つのAIとも一度も挙げませんでした。
製造業のLLMO(生成AI検索最適化。GEO=Generative Engine Optimization とも呼ばれます)とは、顧客が生成AIに投げる質問に対して、自社が候補として挙がり、正確に説明される状態をつくることを目的とした取り組みです。見落とされやすいのは、「候補として挙がる」と「正確に説明される」が別の能力だということ。多くの製造業は、後者だけをすでに満たしています。
御社でも確かめられます。まず自社名を入れて聞いてみる。次に、御社をまだ知らない顧客が困っているとき、その人がどんな言葉で書くかを考えて、それをそのまま入力する。歩留まりの話か、納期の話か、材質の話か。二つの答えを並べてみてください。
なお、この領域に確立された方法論や業界標準はありません(2026年8月時点)。以下は当社の観測と、それにもとづく解釈です。
社名で聞けば全AIが答え、課題で聞けばゼロになる
当社では、複数の企業について、生成AIに同じ質問を定期的に投げて回答を記録する調査を続けています。定点観測です。そのうちの1社について、着手前の状態を記録した結果が次のものでした。
| 指名の質問(社名・サービス名を含む) | 課題起点の質問(社名を含まない・5問) | |
| ChatGPT | 言及されました | 言及されませんでした(0%) |
| Gemini | 言及されました | 言及されませんでした(0%) |
| Claude | 言及されました | 言及されませんでした(0%) |
【出典】株式会社イノベーター・ジャパン 自社調査(2026年、生成AIの回答の定点観測。BtoB企業1社の着手前の記録。実測値。製造業を対象とした調査ではありません)
指名の質問では、3つのAIとも技術的特徴を正確に説明しました。引用されていたのは自社サイト、報道、プレスリリースです。読める状態にあり、内容も正しく伝わっている。それでも課題の側から尋ねると、同じ会社が出てきません。
同じ非対称は、業種の異なる複数のテナントでも再現しています。この0%は技術力の評価ではなく、質問のされ方の違いだけで生じている。同じAIが、同じ会社について、片方では正確に語り、片方では存在しないかのように振る舞います。
展示会に置き換えると分かりやすいかもしれません。名指しで訪ねてくる相手には、ブースで正確に説明できます。しかし「こういう不具合をどうにかしたい」と会場を歩いている人の動線に、自社が入っていない。
なぜ、課題から探されると出てこないのか
ここからは当社の見解です。
理由は、翻訳の担い手が変わったことにあります。優れた営業担当者は、顧客の「困っている」を自社の解に翻訳してきました。展示会でも、電話でも、この翻訳は人が担う仕事でした。生成AIがその翻訳を引き受けるようになった以上、AIが参照できる材料——Web上に言語化された自社の強み——がない企業は、翻訳の対象になりません。技術力があることと、AIが認識できることは別です。