この記事の結論
外国人材の受け入れは、採用できたら終わりではありません。特定技能は技能実習と異なり、転職が可能な制度です。つまり定着は自動的に得られるものではなく、会社側が「働き続けたい」と思える環境を設計して初めて実現します。本記事は、公的データと制度の仕組みから、採用をゴールにする会社と、定着を設計する会社の違いを整理します。
定義:外国人材の「定着」とは、そして「採用」との違い
定着とは、採用した外国人材が離職せず、同じ会社で働き続けている状態を指します。一方、採用は雇用契約を結んだ時点というスタートラインにすぎません。
この違いを意識せずに「採用できたかどうか」だけを成果指標にしてしまうと、受け入れ後に何が起きているかが見えなくなります。特に製造業においては、この違いを踏まえる必要性が他産業より高くなっています。理由は、外国人材にとって「この会社で働き続けるかどうか」が、実は選択の余地のある問いになっているからです。
事実:外国人材は増えているが、「定着」は別の問題
製造業は、外国人材受け入れの最前線にある
令和7年10月末時点で、外国人労働者数は257万1,037人となり、前年比268,450人(11.7%)増加し、届出が義務化された平成19年以降で過去最多を更新しました。産業別にみると「製造業」が最も多く、外国人労働者数全体の24.7%を占めています(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」)。
つまり製造業は、外国人材受け入れの最前線にある産業です。ただし、これは「雇っている」という量の話であり、「その人材が働き続けているか」という定着の問題とは、別の軸で語る必要があります。
特定技能は、転職が可能な制度である
在留資格別にみると、「専門的・技術的分野の在留資格」が865,588人と最も多く、前年比146,776人(20.4%)増加しました。このうち「特定技能」の外国人労働者数は286,225人で、前年比79,230人(38.3%)増加しています(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」)。
特定技能が技能実習と大きく異なるのは、転籍(転職)が可能な制度である点です。技能実習は原則として同一の実習実施者のもとで技能を習得する制度であるのに対し、特定技能は要件を満たせば、同じ分野内で別の受入れ企業へ移ることができます(出入国在留管理庁「特定技能制度」)。つまり特定技能で働く人材にとって、「今の会社で働き続けるか」は、あらかじめ選択肢のある問いなのです。