この記事の結論
製造業の営業利益率は、近年上昇しています。ただ、その果実は企業規模で大きく偏り、大企業と中小の差はおよそ2倍にひらいています。直近では大企業だけが利益率を伸ばし、中小はむしろ微減しました。背景には、取引構造や価格転嫁の遅れといった、中小に固有の事情があります。本記事では、公的統計と取材で得られた経営者の声から、利益が中小に届きにくい理由を整理します。
製造業の営業利益率とは──定義と現在の水準
売上高営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合を示す指標で、本業の営業活動における収益力を測る尺度です。「営業利益 ÷ 売上高 × 100」で算出します。値が高いほど、本業でしっかり利益を出せていることを意味します。
財務省の法人企業統計調査(年次別調査)によると、2024年度(令和6年度)の製造業(全規模)の売上高営業利益率は5.4%でした。全産業(全規模)は5.0%、非製造業(全規模)は4.9%で、製造業は全産業平均をやや上回る水準にあります。
なお「全規模」とは、資本金の大小を問わず、すべての営利法人を合算した数値です。つまりこの5.4%は、大企業から小規模企業までをならした平均値であり、企業ごとの実感とは開きがある点に注意が必要です。この「平均の内側」に何が隠れているかが、本記事の主題です。
製造業の利益率は伸びていないのか──全体は上昇、中小は停滞
まず、製造業全体の利益率の推移を確認します。法人企業統計(年次別調査・全規模)でみると、製造業の売上高営業利益率は2020年度3.1%、2021年度5.2%、2022年度4.5%、2023年度5.1%、2024年度5.4%と推移してきました。2020年度はコロナ禍で落ち込んだ時期にあたりますが、その後は回復し、直近は上昇基調にあります。まず押さえるべきは、「製造業全体では、利益率はむしろ上がっている」という事実です。
問題は、その上昇分が企業規模によって偏っていることです。
※ここからの規模別の数値は、四半期別調査(資本金1,000万円以上が対象)をもとに編集部が算出したもので、前掲の全規模5.4%(年次別調査)とは調査が異なるため、直接比較できません。
比較表(1):製造業の売上高営業利益率(規模別)
| 区分 | 2023年度 | 2024年度 |
| 大企業(資本金10億円以上) | 5.99% | 6.70% |
| 中小(資本金1,000万〜1億円未満) | 3.60% | 3.51% |
※出典:財務省「法人企業統計調査 時系列データ」(統計表ID 0003060791)。四半期値(2024年4-6月〜2025年1-3月期)を年度合計し、営業利益÷売上高で編集部が算出(e-Statの年度直接値ではありません)。区分は中小企業白書に準拠(大企業=資本金10億円以上/中小=1,000万〜1億円未満)。
製造業を規模別にみると、資本金10億円以上の大企業は2023年度5.99%から2024年度6.70%へと上昇しました。一方、資本金1,000万〜1億円未満の中小は、同じ期間に3.60%から3.51%へと微減しています。2024年度時点で、両者の差はおよそ2倍です。
利益率が全体として上がっているとき、その恩恵を主に受けているのは大企業であり、中小はむしろ足踏みしている――これが、「利益率が上がっても中小に届かない」という本記事の出発点です。
なぜ中小製造業に利益が届かないのか──4つの真因
ここからは、なぜ中小に利益が届きにくいのかを、4つの角度から整理します。ただし、統計が語るのは「利益率がどうなっているか」という事実までであり、「なぜそうなるのか」という理由の部分には、公的機関の見解や取材で得た経営者の声をもとにした本記事の考察が含まれます。数値そのものと、その解釈は区別してお読みください。